2025年度 モデル賃金・モデル年間賃金の実態

20251223更新
掲載している雑誌:賃金事情

 

 産労総合研究所では,例年,全国の企業を対象に「モデル賃金・モデル年間賃金調査」を行っている。このたび,2025年度の調査結果がまとまったので紹介する。(モデル賃金の算定方法については参考資料を参照)。

 

 2025年度モデル賃金(大学卒・総合職・所定内賃金)
  25歳 26万2,096円 6.2% 上昇 / 50歳 52万5,638円 0.9% 上昇
  30歳 31万7,879円 2.7% 上昇 / 55歳 57万4,771円 3.6% 上昇
  40歳 42万4,396円 2.3% 上昇

 

 

主なポイント

・賃上げ額と率

 全体平均で1万3,440円(前年1万2,180円),4.32%(同4.10%)で,前年より1,260円,0.22ポイント増加した。この賃上げ額のうち,定期昇給相当額は5,592円(同5,643円),1.84%(同1.89%)であった。
結果,ベースアップは額で7,848円(同6,537円),率で2.48%(同2.21%)となる。

 

調査要領

【調査名】「2025年度モデル賃金・モデル年間賃金調査」
【調査対象】当社会員企業および上場企業から任意に抽出した約4,000社
【調査時期】2025年7月上旬~8月末
【調査方法】郵送によるアンケート調査方式
【集計対象】締切日までに回答のあった188社について集計

 

モデル賃金・モデル年間賃金調査の企業の内訳

 

 

(参考資料)

集計企業におけるモデル賃金の算定方法の内訳

 

◆モデル賃金とは◆
 モデル賃金とは,一定のモデル条件に該当する労働者の賃金である。モデル条件は,「最短年数で進学し,学校卒業後すぐに入社し,引き続き同じ企業に勤続している者」をまず第一に,年齢,勤続,学歴,扶養家族,職種などが加えられる。これらの条件は,依然として年功賃金の性格が残るわが国において,重要な賃金決定要因であり,それぞれの条件に合致する者の賃金カーブは,その企業の賃金格差構造の骨格をなしている。これを調査することによって,一企業における賃金格差構造や,同一条件のもとでの他社との賃金比較が可能となる。
 また,モデル賃金は新規学卒者の初任給とその後の標準的な昇給状況を示すデータとしても有用である。

◆モデル賃金の算定方法◆
 モデル賃金の算定方法には,①理論モデル,②実在者モデル,③その他,両者の併用等,の種類がある。
①理論モデル:モデル条件にあった賃金を賃金表から読み取ったもの。
②実在者モデル:モデル条件にあった実在者を順次選び出し,それらの賃金を読み取ったもの。該当する実在者がいない時は,前後の賃金から想定する。
 理論モデルは,その企業の基本的なカーブをみるには有意義だが,必ずしも実在者がその賃金カーブ上にあるとはいえず,傾向としては,理論モデルは実在者モデルよりも高めになる。また,賃金表や昇格基準などが整備されていないため,理論モデルを試算できない企業も多い。
 実在者モデルの場合は,実在者のなかで誰を標準者とするか,実在者がいない年齢ポイントをどうするか,という問題が生じうる。
 本調査の集計結果には,上記①~③のケースが混在している。

 

調査結果の概要

1.モデル賃金

 

(2024・2025年が同一条件で回答のあった企業のみを対象)

図 1 年齢ポイント別にみたモデル賃金の上昇率(大学卒・総合職)

 

(1)賃上げ状況

 2025年の賃上げ状況は,「賃上げあり」が91.5%で,そのうち「ベースアップを実施」は71.3%,「定昇のみ」20.2%だった(表1)。賃上げした企業は前年の90.4%から1.1ポイント増加し,ベア実施k企業は1.6ポイント増加した。

 

表1 集計企業における2025年賃金改定状況

 

 

(2)年齢ポイント別にみた上昇率

 本調査では前年比をみるために,2024年度と2025年度に続けて回答のあった企業のうち,同一の設定条件および役職で回答のあった企業を抽出して,全体集計とは別に集計している(大学卒・総合職のみ)。これは,回答企業が毎回同じとはかぎらないため,単純に集計結果を比較しても,誤差が生じてしまうためである。なお,ここでの上昇率は,同一年齢を比較しているので,定期昇給分などは含まれず,ベースアップと諸手当などの改定分が反映されている。以上を踏まえて表3をみると,大学卒・総合職の基本賃金の上昇率が4%を超える年齢ポイントは27歳以下の3つのポイントのみで,他の年齢ポイントはおおむね2~3%台となった。

 

表2 集計企業における2025年賃上げ状況

 

 

表3 モデル賃金の上昇率(2024・2025年が同一条件で回答のあった企業のみを対象)

 

 

(3)モデル所定内賃金,基本賃金の年齢間格差

 年齢間格差は長期的にみると縮小傾向にあり,2025年は2024年から高年齢ポイントになるにつれて2024年と比べて格差が縮まった。表4左の「モデル賃金の格差(全体計)」が,全回答企業における年齢間格差である。大学卒・総合職の22歳を100として,35歳150.3(前年154.5),40歳172.0(同181.3),50歳215.5(同226.2),55歳232.4(同244.4)となった。 また,すべての年齢に記入があり,最高役職位まで昇進・昇格するように設定している企業を抽出して集計を行ったのが,表4右の全年齢記入企業におけるモデル賃金の「年齢間格差」である。銘柄別の個別賃金をみるという点で理想的なのが「全従業員対象の理論モデル」だが,同表はこれに近いものである。

 

表4 全年齢記入企業における大学卒・総合職のモデル賃金(全産業・調査計)

 

 

2.モデル年間賃金

 「2025年度モデル年間賃金」は,「2025年度モデル賃金」×12カ月+「2024年年末賞与・一時金」+「2025年夏季賞与・一時金」で算出したものである。なお,モデル年間賃金の算定のベースとなるモデル賃金は,賞与・一時金にも回答があった企業のみで集計したものである。

 

(2024・2025年が同一条件で回答のあった企業のみを対象)

図 2 年齢ポイント別にみたモデル年間賃金の金額と上昇率(大学卒・総合職)

 

(1)賞与・一時金の支給状況

 回答企業の賞与・一時金の支給状況をみると,2024年年末は69万2,168円(前年69万166円),2.29カ月(同2.34カ月),2025年夏季は67万9,486円(同68万6,055円),2.20カ月(2.30カ月)。前年の結果と単純に比較すると,年末は2,002円増,夏季は6,569円減となった。増減率に記入のあった回答を集計したものが表5の「前年比」の欄である。2024年年末5.5%増(前年5.6%増),2025年夏季は3.9%増(同5.9%増)となった。

 

表5 賞与・一時金の平均支給額,月数

 

(2)年間賃金の動向

 年間賃金を主な年齢でみると,大学卒・総合職は,25歳426.3万円(前年410.1万円),30歳513.2万円(同508.5万円),35歳597.3万円(同590.0万円),40歳685.8万円(同699.6万円),50歳874.0万円(同882.3万円)である(表6)。
 年間賃金に占める賞与・一時金の割合は,25歳時で,大学卒は26.1%(同26.7%),高校卒では25.8%(同25.8%)であった。また,支給月数は,大学卒では25歳以降4.23~4.74カ月と4カ月台,高校卒でも20歳以降で27歳の3.94を除いて,4.01~4.48カ月とほぼ4カ月台となっている。

 

表6 規模別にみたモデル年間賃金と賞与比率,月数

 

(3)モデル年間賃金の上昇率

 2024年度と2025年度の両年に回答があり,同一設定条件の企業のみを抽出してみたのが表7である。大学卒・総合職での22歳5.1%,25歳4.9%,55歳3.5%,27歳3.1%を除き2.5%以下となった。高校卒・総合職では20~25歳は4%台だが,27~35歳が3%前後,それ以降は2%以下となった。これは,初任給上昇の波及と考えられる。
 業種別では,大学卒の製造業,非製造業すべての年齢ポイントでプラスとなり,高校卒では製造業ではすべての年齢ポイントでプラスとなったが,非製造業では50歳と55歳でわずかだがマイナスとなった。

 

表7 モデル年間賃金の上昇率(2024・2025年が同一条件で回答のあった企業のみを対象)

※詳細データや管理職/非管理職別モデル賃金・モデル年間賃金,役職者賃金,各種手当の支給状況などは「賃金事情」2025年10月20日号,11月5日号に掲載しています。
 

印刷用PDFのダウンロード

 

本リリースに関する取材などのお問い合わせ

株式会社産労総合研究所『賃金事情』編集部
TEL 03-5860-9791 MAIL edt-a@sanro.co.jp

 

2026年版 モデル賃⾦実態資料

モデル賃金は、年齢、学歴、職種などを基準として「正規入社者が標準的に昇進・昇格した場合の賃金」をみる賃金指標です。1970年より毎年実施している「モデル賃金調査」の集計結果と個別企業の実態を掲載しており、自社賃金の水準やバランスをチェックするうえで貴重な最新資料です。

詳細を見る